2021年　債券投資の意義

2020年、世界で同時進行した大規模な社会実験において、各国の国債の金利が蒸発してしまいました。それでも配分して投資するのか？について検討します。

資産クラスの定義

資産配分がパフォーマンスの80％を説明する、と聞かされて育ったころ、ある生保団体の資産クラスは以下のようになっていました。

短期資産	現金など。無リスク資産
国内株式	日本株
国内債券	日本国債
外国株式	日本除く株式
外国債券	日本除く国債
オルタナティブ	伝統的ではないもの。ABS,MBSや不動産など

AGG（米国ETF）の構成銘柄を見ると多数の証券化商品（サブプライムローンなど）が入っているみたいであり、それがAGGの収益エンジンみたいなので、もはや上記のような分類がずれているのかもしれません。

今回は伝統的な債券の話です。

国内債券の推移

長期的にはインフレに勝てるのは株だけ、と聞いたことがあります。過去50年間、日本において、債券の立場は大きく変わりました。

1970年から1985年（成績▲）

日本国債を持っていても利回りは期待できましたが、インフレがすごくて、実質的にはあまり成績の良い投資先ではなかったようです。（私は子供ですのでよくわかりません）

1985年から2005年（成績◎）

プラザ合意で日本円の価値が一気に2倍になりました。そのあと1995年の超円高フェーズに向かって円の価値が上がり続けます。

物価が安定し（どこかでデフレがスタートしたそうです）、その割に金利は高くて、価値が上がり続ける円での安定的な債券投資は十分に魅力的な投資先でした。政府の景気対策などで短期債券は徐々に金利が低下してしまいましたが、長期金利は十分な利回りがあり、私が加入していた小規模共済でも予定利率が7％くらいありました。（チューコクファンドって読み方をする中国ファンドは短期金利の低下とともに消えていきました）

住友銀行を救った宿澤というラグビーの人も日本国債で多くの利益をたたき出したんじゃなかったと思います。

2005年から2019年（成績×：無価値へ）

政府の金融政策が資産配分に大きな影響を与え始めます。長期国債の金利も低下していき、最終的にはどこまで行っても0％の平坦なイールドカーブができてしまいます。株式と債券が同一方向に動くことも増え、逆方向に動いたとしても債券は変化が微細すぎて、日本円としては個人投資家が日本国債を保有している意義はほとんど失われました。

非常に魅力的な20年をはさんで無価値になってしまいまいたが、同時に市場（マーケット）による価格形成がなされず、「官製」商品化していったと言えます。

多くの個人投資家は国内債券を保有せず、国内債券に相当する金額を現金として保有し（キャッシュポジション）、市場急変時にリバランスするようになっています。

外国債券

2020年、世界中で社会実験がスタートしました。「スウェーデンが社会実験」なんて言われていましたが、ロックダウンした他の国だって成算があるわけではなく、社会実験であることは同様です。対策費用に政府は誰にも遠慮せずお金を発行しているようで、いくらでもお金があるので世界中から金利がなくなってしまいました。水没とか蒸発とか言われていますが、債券価格はこれ以上上がるのが難しいくらい上がってしまい、金利はほぼ0です。

世界中の債券価格が市場ではなく官製価格になった以上、日本国債同様に投資価値がなくなってしまったと言えます。

例外は新興国でしょうか。高インフレ国には名目金利は残っています。実質金利はマイナスなのでしょうが、新興国は2021年非常に有望な投資先と考えますので新興国株式を購入するのなら同新興国債券も検討可能です。

外国債券についてすべてを新興国債券とするのは狂気の沙汰ですが、外国債券分もキャッシュで保有する場合は為替に注目する必要があります。

為替変動を見ながら適切な外貨保有を

円高ではなくドル安なのであまり大騒ぎされていませんが、2021年1月段階でドル円相場（USD/JPY）は100円近くまで円高になってきています。米国は積み上がった債券の利回りが上昇することが許容できないので徐々に通貨の価値を下げる懸念があります。日本も通貨の価値を下げていかないと破綻するのですが、当面無策なのでずるずると円高方面に進む可能性があります。

通常通り外国債券として外国資産を持っていれば超円高の場合、リバランス作業として円ベースで減少した外国債券に追加投資することになります。この作業が将来、円安に振れたときに恩恵として受けることができるのです。

2021年、外国債券への投資を中断し、キャッシュポジションで経過を見る場合でも為替相場には注目し、リバランスが必要なほど円高に振れた場合は外貨購入して外貨でキャッシュポジションを持つことを考えます。

投資は自己判断でお願いします。